台湾有事とは いつ起こる?日本はどうすべき?【簡単に分かりやすく解説】

台湾有事とは いつ起こる?日本はどうすべき?政治・経済
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台湾有事とは

「台湾有事」とは、簡単に言うと「中国が武力で台湾に侵攻する」ことを言います。

また、直接侵攻しなくても、台湾海峡を封鎖したり、台湾を孤立させるような行為も含まれることがあります。

中国は台湾統一を目指していて、できれば平和的に(台湾が自主的に統一されることを選択する)統一したいが、そうでなければ武力行使も排除しないという考え方のため、近年、中国による軍事侵攻が懸念されています。

下記に記載していますが、過去に何度も台湾海峡危機が起こっています。

中国の主張

中国は、台湾は中国固有の領土で不可分なものだと言っています。

「一つの中国」という考え方です。

そもそも中国の一部なので、国家主権もないという立場です。

したがって、ある国が中国と国交を結ぶ場合は台湾と断交することになります。(日本も1972年にそうしました:日中国交正常化)

台湾の主張

台湾は「中華民国台湾」※1であり、中華人民共和国ではないという立場です。

中国との関係は、台湾海峡を挟んだ「特殊な国と国の関係」(李登輝)※2という考え方です。

現在の蔡英文政権は「現状維持」政策がとられています。

ちなみに、台湾市民の意識調査(「台湾民衆重要政治態度」1994-2022)でも現状維持が望ましいとする意見が過半数を占めます。(2022年:現状維持57.2%、独立31.0%、統一7.2%、無反応6.0%)

※1:「中華民国台湾」は現政権の呼称であり、正式には「中華民国」。従来の「中華民国」は中国大陸で起こり、蒋介石が中国共産党との戦いで敗れて台湾に逃げてきて、いずれは中国全土を統一するというものでしたが、それに対して「中華民国台湾」は、現状統治している台湾地域のみを指す現実に即した考え方。
※2:この考え方をめぐっては、政権が代わるとニュアンスが変わりますのでご注意ください。

台湾有事はいつ起こるのか?

アメリカの前インド太平洋軍司令官は、2027年までに中国が台湾を武力攻撃する可能性が高いと警告を発しています。

2027年というのは、習近平の任期が2027年までだからです。

これまでは、軍事侵攻は中国にとっても様々な意味でリスクが高いため、実際には行われないだろうという考えが多かったのですが、ロシアのウクライナ侵攻以降、合理的な損得勘定ではなく、特定の人物の思想や意思で戦争が勃発したことを受けて、俄かに危機感が高まりました。

実際に習近平は台湾統一に並々ならない意欲があります。また、香港の「一国二制度」を事実上反故にしてしまったことから、その信ぴょう性が高くなっています。

台湾有事の過去の経緯から軍事侵攻の可能性を考える

2022年8月に台湾を取り囲むように中国軍による軍事演習が行われました。

これによって危機感が高まりましたが、中国はこれまでもこのようなことを行っています。

台湾海峡をめぐる過去の主な経緯を振り返ってみましょう。

台湾有事に関する主な経緯
  • 2023
    米インド太平洋軍前司令官が2027年までに中国が台湾を攻撃する可能性に言及

    デービッドソン前司令官
    習近平の在任期間中に台湾進攻の可能性があると自民党の会議で述べる

  • CSISが台湾有事の24通りのシミュレーションを発表

    結果は侵攻失敗が22例、中国勝利が2例となっている
    中国が勝利する2つのシミュレーションは以下の通りである
    ①米国が参戦しない
    ②日本が完全中立を守り、在日米軍基地でのアメリカの作戦行動を許可しない

  • 2022
    2027年より早期に台湾へ侵攻する可能性が高いと米政府

    マイク・ギルデイ米海軍作戦部長が2022年あるいは23年の可能性もあると発言
    ブリンケン国務長官は、「中国は現状をもはや受け入れられず、これまでよりもずっと速い時間軸で台湾統一を追求すると決意した」と強調した

  • 台湾周辺での軍事演習(第四次台湾海峡危機)

    アメリカ下院議長ナンシー・ペロシの台湾訪問を受けて中国人民解放軍が大規模演習を実施
    事前通告されたが、日本のEEZ=排他的経済水域にもミサイルが撃ち込まれ、緊張感が高まった。日本は「抗議した」そうです。ミサイル撃ち込まれたのに?なんて優しい国なのか・・・

  • 2021
    米インド太平洋軍司令官が2027年までに中国が台湾を攻撃する可能性に言及

    デービッドソン司令官が上院軍事委員会公聴会で「6年以内に危機が明らかになる」と言及

  • 2015
    台中首脳会談開催

    馬英九と習近平がシンガポールで首脳会談
    中台接近の時期

  • 2013
    中国国営新聞が「六場戦争(六つの戦争)」という記事を掲載

    2020年から2025年にかけて台湾を取り返し、2028年から2030年にかけてベトナムとの戦争で南沙諸島を奪回し、2035年から2040年にかけて南チベット(アルナーチャル・プラデーシュ州)を手に入れるためインドと戦争を行い、2040年から2045年にかけて尖閣諸島と沖縄を日本から奪回し、2045年から2050年にかけて外蒙古(モンゴル国)を併合し、2055年から2060年にかけてロシア帝国が清朝から奪った160万平方キロメートルの土地(外満州、江東六十四屯、パミール高原)を取り戻して国土を回復するという

  • 2005
    中国で「反国家分裂法」を成立

    台湾が独立を宣言した場合に、「非平和的手段」の行使を合法化

  • 2000
    中国が台湾白書発表

    統一交渉の無期限の拒絶は武力行使の対象になると警告

  • 1999
    李登輝が「二国論」を提起

    中台は「特殊な国と国の関係」(いわゆる「二国論」)

  • 1995-1996
    第三次台湾海峡危機(台湾海峡ミサイル危機)

    台湾で最初の総統直接選挙で李登輝(民主化を推進していたため中国にとっては不都合な人物であった)優勢の観測が流れると、人民解放軍は選挙への恫喝として軍事演習を強行した

  • 1958
    第二次台湾海峡危機(金門砲戦)

    1958年8月23日から10月5日にかけて、中華民国福建省金門島に対し、中華人民共和国の中国人民解放軍が同島に侵攻すべく砲撃を行った
    実質的な戦闘行為は10月5日に終わったが、人民解放軍による砲撃は1979年1月1日までの約21年間にわたって定期的に続けられた
    アメリカは第七艦隊の空母群を台湾海峡周辺に派遣

  • 1954-1955
    第一次台湾海峡危機

    中華人民共和国は大陳群島を封じながら江山島を襲撃
    アメリカ海軍と中華民国海軍は、大陳群島から台湾に中華民国の軍民を避難させるのに共同作戦を行う

  • 1950
    アメリカ「台湾不干渉声明」

    1月5日にアメリカのハリー・S・トルーマン大統領は、アメリカは台湾海峡に関するいかなる紛争にも関わることは無く、中華人民共和国の攻撃があっても一切介入することは無いとする「台湾不干渉声明」を発表

これを見ると、長い時間をかけて徐々に恫喝のレベルが上がってきています。

軍事バランスの変化で緊張が高まっている

中国の台湾統一願望は今に始まったわけではありません。

ではなぜ今、台湾有事がこれほどまでに注目を集めているのかというと、その理由の一つに中国の軍事力の急速な拡大(質の向上も含め)があげられます。

日本の防衛費と米中の国防費の推移
Picture:読売新聞オンラインより

世界第二位の国防費を誇る中国は、1992年からの30年間で国防予算を約39倍に増大させています。2022年時点では日本の約6.5倍です。(台湾の2022年防衛費は約156億ドル:1$=30.032NTDで計算)

一位は断トツアメリカですが、アメリカはアジアだけでなく世界中に展開しているので、台湾海峡だけで全額使うわけにはいきません。

軍事費比較
資料:「軍事費(購買力平価ベース)」 GLOBAL NOTE 出典: 世銀 より筆者が作成

中国の台湾統一は今に始まったことではないに、なぜ今緊張感が高まっているのかというと、これまではアメリカが介入すると中国が負けることが明らかだったのですが、近年中国の軍事力が拡大し、そろそろ「勝てる」という算段ができるようになってきたということがあります。

2022年8月に中国が行った軍事演習区域

中国の軍事演習区域(2022)
「中国の軍事演習区域(2022)」報道資料より筆者作成

ウクライナ侵攻が台湾に及ぼした影響

ロシアのウクライナ侵攻で、核による抑止が効いていることも、中国を後押しする材料になるのではないかと懸念されています。

ロシアの武力侵攻に際して、西側は直接参戦しないどころか、武器供与についても常に慎重です。これは中国から見ると、台湾有事に際しても西側の直接介入がないと思わせる可能性があります。

実際どうなるかは別として、中国がそう思うことが危険であり、台湾侵攻に着手する動機になった時点で終わりだと考えるべきです。

中国への経済依存の問題が最大のネック

中国の軍事的な拡大はもちろんですが、中国を一番強気にさせているのは経済ではないでしょうか?

中国のGDPは世界第2位で、全世界の18.3%を占めています。

資料:「名目GDP(IMF統計)」 GLOBAL NOTE 出典: IMF より筆者が作成

しかも中国の輸入額のTOP6は、台湾、日本、韓国、アメリカ、オーストラリア、ドイツです。いずれも西側かつ台湾有事に大きく関わってくる国ばかりです。

中国の輸入額

輸入総額:2兆603億ドル[2020年]
国名/貿易額/(シェア)
・台湾 2,021億ドル(9.8%)
・日本 1,761億ドル(8.5%)
・韓国 1,735億ドル(8.4%)
・アメリカ 1,361億ドル(6.6%)
・オーストラリア 1,148億ドル(5.6%)
・ドイツ 1,053億ドル(5.1%)
JFTC(一般社団法人日本貿易会)より

ロシアへの経済制裁でも世界的なエネルギー価格の高騰やインフレに苦しんでいるのに、ロシアの10倍以上の経済規模がある中国と本当に事を構えられるのか?ということのほうが、大きな問題となってきます。

台湾有事に日本はどうすべきか?

日本政府の動き

台湾有事に対して日本政府はどう対応しているのか?

  • 日米豪印クアッドの枠組み創設
  • 防衛費拡大(5年でGDP2%程度を目指す)
  • 防衛3文書改訂
  • 台湾の半導体工場を日本に誘致
  • 米国国土安全保障省とサイバーセキュリティーに関する協力覚書を締結
  • 図上演習による沖縄の避難の検証

台湾有事に限らず、中国の軍事的拡大についてはこれまでも対応を行ってきました。軍事だけでなく経済や外交関係を含め、一見台湾有事対策と見えないことも、中国を念頭にしていることは多くあると思います。

したがって、上記に列挙したことは分かりやすい大きなトピックであって、これだけではないことは押さえておきたいと思います。

また、民間企業も原材料の調達先の見直しなど、チャイナリスクに対して具体的に動き出したのも、こうした緊張感の高まりからきています。これまでもチャイナリスクは認識していましたが、特定の企業が先行して対策すると中国から報復されたり、社会から非難されることを恐れて、二の足を踏んでいたのが実態ではないでしょうか。

しかしながら、過去何十年も国防を棚ざらしにしてきたつけは大きく、課題は山積しています

これからできる対策

課題は山積していますが、意識が変われば対策は可能です。

あまりニュースで取り上げられないことを中心に考えられる対策を検討してみたいと思います。もちろん政府や関係各所が検討あるいはすでに実施していることが多々あると思います。

また、軍事以外の分野でのリスクマネジメントも強化していく必要があると思います。

  • 台湾の邦人避難方法の確立(邦人だけでなく退避したい人全員を救えるような法的対応)
    日本が一番近いので、民間人避難などは日本が一番活躍しないといけない分野だと思います。
  • 有事法制の整備
    日本は、国土が戦場になることを想定して法律が作られていません。法律の制約のせいで国民が見殺しにならないようにしっかりと法整備を急いでいただきたいと思います。
  • 台湾との連絡メカニズムの構築
    軍事のみならず様々な分野とレベルで連携できる窓口を強化・整備していくことが重要です。意思疎通と情報を間違えると大惨事になりかねません。

以上のようなことは直接的な事ですが、もっと根本的に重要なことがあると思います。

  • 現実を直視したタブーなしの議論を行う
  • 最悪の状況を想定して「想定外」を作らない努力をする
  • 日本国民が自分事として考え、社会や政治に関心を持つ

これらは、私たち一人ひとりができることです。民主主義国である日本を守るには、国民自身が考え行動することが一番重要なことになると思います。

台湾有事のまとめ

まとめ
  • 台湾有事とは「中国が武力で台湾に侵攻する」こと
  • 2027年までに中国が台湾に軍事侵攻する可能性が高いとアメリカは考えている
  • 中国の軍事費が拡大して日米に匹敵している
  • 日本も軍事、経済など各方面で対策を行っている

最後まで御覧いただきありがとうございました。

なるべく簡単に分かりやすく書いたつもりですが、これをきっかけに他の情報もチェックしてみてください。

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