世界最大級の資産運用会社の創業者「ハワード・マークス」
ウォーレン・バフェットも本書を大絶賛し、バークシャー・ハサウェイの株主総会で配布したと言われています。
マークスの投資哲学を20の教えという形で紹介した本書は、長期投資で生き残るために必要な心と戦略の在り方を詳しく説明しています。
これは「簡単に稼げるHow to」ではありません。投資に関する考え方、スタンスを伝える内容で、特にリスクに対する姿勢を繰り返し強調されています。
ハワード・マークス(Howard Marks)プロフィール
オークツリー・キャピタル・マネジメント会長兼共同創業者。ロサンゼルスを拠点とするオークツリー・キャピタル・マネジメントは運用資産800億ドル以上を誇る投資会社で、ハイイールド債投資や不良債権への投資を得意とする。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールにて金融を学び、シカゴ大学経営大学院にてMBAを取得。
「投資で一番大切な20の教え」株式会社日経BP,日本経済新聞出版,P316,著訳者紹介より
20の教えの概略
この本では、ハワード・マークスの投資哲学を20に分けて説明されています。彼が過去に顧客向けに書いてきたレターを引用する形で、投資を成功させるために必須と感じた要素をまとめています。
筆者は本書のなかで「投資を成功させるには、数多くの独立した要素に、同時に思慮深く注意を向ける必要がある。」と書いています。その独立した要素が20の教えです。
初めに、投資が行われる市場の環境について論じるところから始まります。
その後投資家と投資の成否を左右する要素、成功の確率を高めるためにすべきことへと話が進んでいきます。
- 二次的思考が大切な理由
- リスクとは何か?
- リスクをコントロールするには?
- 長期に渡って生き残る方法は?
これは短期的な儲けを狙うための「How to」ではありません。長期間市場から退場することなく、不慮の厄災がおこっても、それを乗り切るための羅針盤のような一冊です。
私が印象に残ったこと
この本を読んで感じたことを一文にすると、「リスクを正しく理解して、向き合い、準備する」と言えると思います。
一見、当たり前のようなことですし、私自身がもとから慎重派なのでリスクを考えていたほうですが、個別の要素に分解して解説されている本書を読んでみると、今までいかに危ない行動をしていたかが身に沁みました。
ハワード・マークスが記している通り、これは投資哲学であり、論理的に繋がりをもった考え方だと思います。
また同時に感じたことは、この本を投資を始めたばかりのときに読んでもあまりピンとこなかっただろうなぁということです。実際に運用してみて、多かれ少なかれ失敗や後悔が残る経験をしたうえで読むと、より理解が深まるのではないでしょうか。
以下、私が特に印象に残った項目を3つご紹介します。
二次的思考をめぐらす
「これは良い企業だから、株を買おう」というのが一次思考。
「投資で一番大切な20の教え」株式会社日経BP,日本経済新聞出版,P19
一方、「これは良い企業だ。ただ、周りは偉大な企業と見ているが、実際にはそうではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次志向です。
これを見ると分かるように、一次志向と二次志向では行動が全く異なります。語弊があるかもしれませんが、「裏を読む」ような思考法です。
このくらいだと、誰もが普段から考えていることのように思われますが、ハワード・マークス曰く、一次志向の人の方が圧倒的に多く、多くの人と同じ予測を立てていてはアウトパフォームすることはできないと言っています。
もちろん、なんでも反対にすればいいというわけではなく、ちゃんとした分析とタイミングが重要だと言っていますが、別章にもあるように、ハワード・マークスは基本的に逆張り時にチャンスがあるというスタンスです。
リスクを認識する
投資で素晴らしい成果を上げるには、リターンを生み出すことと、リスクをコントロールすることの両方が必要だ。そして、リスクをコントロールするためには、まずそれを認識することが絶対的な必要条件となる。
「投資で一番大切な20の教え」株式会社日経BP,日本経済新聞出版,P91
投資をする際、リスクは常に意識の中にあるつもりですが、『どんなリスクがどのくらい?』と言われると、あやふやになってしまいます。
「値下がりリスク」と一言で言っても、『どの程度値下がりすると思うのか?』、『どの程度割高なのか?』と言われると答えられないのが現状です。
ハワード・マークスはリスクについて複数の章で詳しく説明していますが、最も重要なリスクは「高く買ってしまうこと」だと理解しました。
このリスクを冒さないためにどうすべきかが、複数の章にわたって述べられています。
今どこにいるのか感じ取る
サイクルが変動するタイミングや振れ幅は予測できなくても、我々が今サイクルのどの位置に立っているのかを解明し、その結論にしたがって行動するよう努めることが不可欠なのだ。
「投資で一番大切な20の教え」株式会社日経BP,日本経済新聞出版,P219
ハワード・マークスは、市場の未来を予測することは不可能だと言っています。しかし市場にはサイクルがあるとも言っています。
そこでどのように対処すべきかというと、次の3点に力を注ぐべきと言っています。
- 相場が反転するときに備えて警戒を怠らない
- 変化に応じて自分の行動を調整する
- サイクルの頂点と谷底で多くの投資家を完全にまちがった行動へと駆り立てる群衆の振る舞いに、歩調を合わせない
実際はこれが一番難しいのですが、これらについて紙面を割いて説明されていて大変参考になります。
ちょっと笑えるのが、将来の市場の温度を測る評価方法として「貧乏人のための市場評価ガイド」というリストが載っています。これに答えてみて、一定の結果になった人は「財布のヒモを締めておいたほうがよいだろう」と言われます。
こんな人におすすめ
この本は投資活動における基本姿勢というか、信念みたいな土台となる考え方が書かれています。
単に、「こういう時は○○しろ」という短絡的な内容でなく、普遍的なリスクへの態度を学べる一冊です。私にとってバイブル的一冊になりました。
今回は「投資で一番大切な20の教え」ハワード・マークス(著)をご紹介しました。
興味のある方は是非読んでみてください。
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