一院制と二院制とは?世界の議会制度-議員数の国際比較【簡単に分かりやすく】

政治・経済

皆さんは国会議員の数について考えたことありますか?

日本の国会議員は多い?少ない?

そこで、今回は世界の国会議員の人数と議会制度について簡単に分かりやすく解説します。

解説というよりデータ中心になりますが、これをきっかけに日本の議会についても考えてもらえると嬉しいです。

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世界の議会

  青:両院制を採用している国  橙:一院制を採用している国  緑:一院制及び諮問機関を採用する国  黒:議会がない国
Unibicameral_Map.png: Aris KatsarisBlankMap-World6.svg: en:User:Canuckguy SkyBonTalkContributionsderivative work: ҉ Cerveaugenie, CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, via Wikimedia Commons

日本の国会は衆議院と参議院があります。このように二つの議会がある制度を二院制と言います。

これに対して議会が一つだけの国は一院制と言います。

世界では一院制が多数派で、列国議会同盟(IPU)によれば世界の190の国のうち、111が一院制で(全体の約58%超)79が二院制になっています。

一院制と二院制のメリット・デメリット

ではなぜ二つの制度があるのでしょうか?

それぞれメリットとデメリットがあるようなので簡単にまとめてみました

メリットデメリット
一院制・効率的
・意思決定が速い
・議会維持コストが低い
・権力が集中する
・多様な意見を取り上げづらい
・三権分立が崩れかねない
・時に行き過ぎた政治になりかねない
・解散時に議会が空白になる
二院制・拙速を防止できる
・多数による圧制を抑止できる
・権力を分散できる
・選挙制度を複数持つことができる
 →多様な構成を実現できる
・捻じれによる停滞を招く
・二院維持コストがかかる
・両院が同質化すると意味がなくなる
議会制度のメリット・デメリット

上記は一般的なメリット・デメリットであり、選挙制度によりメリットが減殺されたり、デメリットを補ったりすることもできるので一概には言えません。

また、学者によって異なる意見もあり、最終的にはその国の人がどうしたいかによるのだと思います。

一院制の国

世界の約6割の国が一院制ですが、最初から一院制だった国や二院制から移行した国もあります。

特に小さな国は一院制が多く、人口が少ない事やコストがかかることも現実的な理由としてあると思います。

また、実質的な独裁国家は一院制であることが多いです。後半の「その他制度の国」では、特殊な一院制の国を紹介しています。

一院制の国(抜粋)

国名人口選挙権議会の定員人口÷定数
キューバ1,131万16歳6051.9万人
フィンランド553万18歳2002.7万人
ノルウェー542万18歳1693.2万人
デンマーク581万18歳1793.2万人
ニュージーランド504万18歳1204.2万人
ポルトガル1,029万18歳2304.5万人
イスラエル950万18歳1207.9万人
ウクライナ4,159万18歳4509.2万人
ベネズエラ2,795万18歳27710.1万人
セネガル1,674万18歳16510.1万人
イラク3,965万18歳32912.1万人
モザンビーク3,036万18歳25012.1万人
エクアドル1,776万16歳13713.0万人
トルコ8,468万18歳60014.1万人
タンザニア6,100万18歳39315.5万人
韓国5,163万18歳30017.2万人
ベトナム9,762万18歳50019.5万人
台湾2,340万20歳11320.7万人
ペルー3,297万18歳13025.4万人
※人口は外務省HPより(2023年2月9日~10日参照)
※人口や議会定数は統計の時期が異なることがある
※選挙権の年齢はWEB検索により最新の情報を記載するよう努めているが、WEB検索で見つからなかったものについては「諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢.国立国会図書館,2015」を参照している

各国の議会制度に関するトピックス

【ニュージーランド】

ニュージーランド最高裁は2022年11月21日、現在の18歳からの投票権について、16歳への引き下げを検討するよう命じたため、国会で議論されることになっています。(2022年2月10日現在)

【台湾】

これまで20歳だった選挙権を18歳に引き下げる憲法改正案を立法院の全会一致で可決(2022年3月)したにもかかわらず、その後の国民投票(2022年11月)では全有権者の過半数の同意を得られず実現しませんでした。

二院制の国

二院制は国によってそれぞれの議会の呼び名が異なりますが、ここでは「上院」「下院」という名称で統一しています。日本は衆議院が下院で参議院が上院に分類されます。

二院制の国(抜粋)

国名人口選挙権上院定数下院定数人口÷下院定数
日本1億2,570万18歳24846527.0万人
ベルギー1,152万18歳601507.68万人
イタリア6,036万18歳3216309.6万人
イギリス6,708万18歳
(下院)
不定65010.3万人
カナダ3,699万18歳10533810.9万人
ドイツ8,319万18歳
(下院)
法定598
超過736
11.3万人
フランス6,790万18歳34857711.8万人
南アフリカ5,778万18歳9040014.4万人
マレーシア3,260万18歳7022214.7万人
オーストラリア2,575万18歳7615117.1万人
エジプト1億233万18歳30059617.2万人
アルゼンチン4,538万16歳7225717.7万人
メキシコ1億2,601万18歳12850025.2万人
ロシア1億4,617万18歳20045032.5万人
ブラジル2億1,400万16歳8151341.7万人
ナイジェリア2億614万18歳10936057.3万人
パキスタン2億2,090万18歳10434264.6万人
アメリカ3億3,200万18歳10043576.3万人
インド14億756万18歳245543259.2万人
※人口は外務省HPより(2023年2月9日~10日参照)
※人口や議会定数は統計の時期が異なることがある
※選挙権の年齢はWEB検索により最新の情報を記載するよう努めているが、WEB検索で見つからなかったものについては「諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢.国立国会図書館,2015」を参照している
※イギリスの上院は国王の任命によって選出され定数がない(2023年2月9日時点での議席数は780:英国議会HPより)
※ドイツの上院に相当する連邦参議院議員は各州から派遣され国民から選出されない。超過議席数は2023年2月9日現在
※ブラジル、アルゼンチンでは16歳以上18歳未満は任意投票で18歳以上は義務投票

二院制の種類

二院制にはいくつかの形態があります。

◆貴族型
イギリスに代表される形態で、文字通り上院が貴族院である制度です

◆連邦型
アメリカやロシアに代表される形態で、州の自治権が強い国では、民意で選ばれる下院と州の代表を送り込む上院の両院で連邦議会を運営する形をとっています。

◆民選型
日本は民選型です。両院とも国民の直接選挙で選ばれます。その結果、両院の違いがあいまいになることが多く、スウェーデンなどのように二院制から一院制に移行した国もあります。

その他の制度の国

敢えて上記の区分にいれなかった国をここで紹介します。

下記の国はいずれも分類上は一院制の国ということになっていますが、専制国家や絶対君主制という特殊な国なのでいくつか取り上げます。このほかにも同様の国はあります。

国名人口議会に相当する機関定数
中国14億全国人民代表大会
中国共産党が指名した候補の信任投票
2980
北朝鮮2,578万最高人民会議
朝鮮労働党中央委員会が指名した
候補の信任投票
687
サウジアラビア3,534万諮問評議会
国王による任命
150
バチカン市国615バチカン市国委員会
教皇による任命
7
※人口は外務省HPより(2023年2月9日~10日参照)
※人口や議会定数は統計の時期が異なることがある

中国

中国は全国人民代表大会が日本の国会に相当するとされ、一院制議会とされることが多いが、一般国民による選挙ではないことから、その他の制度に分類しました。

人民代表選挙は、中国共産党が指名した候補に対する信任投票という形で行われ、地方議会と中国人民解放軍によって選出されます。

表面的に複数の政党が存在していますが、すべてが共産党の衛星政党でありヘゲモニー政党制の一党独裁国家です。

北朝鮮

中国同様、一般的には一院制議会とされ、ヘゲモニー政党制の一党独裁国家です。

選挙権は数え年で17歳以上の北朝鮮国民にあるが、強制投票で反対票を投じると投獄されると言われています。このため投票率99.99%、賛成率100%であることが多いです。

サウジアラビア

サウジアラビアはサウード家による絶対君主制国家のため、元々は議会は存在せず、国王の勅令が法律という扱いでした。

1992年に統治基本法を成立する王室令が公布されると、閣僚会議と諮問評議会、地方議会が設置されました。国の立法は国王・諮問評議会・閣僚会議(閣議)が有するとされるが、すべての法・条約などは国王の勅令に基づくものでなければならないとされています。

議会に当たる諮問評議会の議員は選挙ではなく国王による任命で決まります。

被選挙権は、各分野で専門的な知識・知見を有する誠実で有能な30歳以上の生まれながらのサウジ人とされていることから、だれでも自由に立候補できるというものではないようです。

バチカン市国

絶対君主制のため議会はありません。ただし、議会に準じる司教会議(シノドス)という世界各地の上位聖職者で構成される会議で、カトリック教会の指針について協議しています。

元首はローマ教皇で、立法権、行政権、司法権が全て教皇にあり、実際には各種委員会が実務を行っています。

カトリック教会の最高機関としての宗教機関でありますが、国家としての側面を持っているという特殊な国です。

義務投票制

世界には投票を義務付けている国がいくつもあります。さらに罰金や選挙権のはく奪などの罰則が厳格に運用されている国もあります。

一番厳しいのは北朝鮮で、投票をしないと無期限入獄となります。さらに恐ろしいのは反対票を投じても同じ目に合うそうです。

これだけ聞くと日本人には恐ろしく聞こえますが、国政レベルの議会議員選挙で義務投票制の国は、罰則がない国も含めて31か国と結構あります。

オーストラリアも罰金制(原則20豪ドル)の投票義務制ですが、投票率が90%という効果を発揮しているので、決して悪い事とは言えないと思います。国民の考え方次第で議会や選挙制度にも差があります。

エクアドルは18歳~65歳が義務投票で、16歳以上18歳未満と65歳超は任意投票だそうです。

罰則がある国ウルグアイ、キプロス、オーストラリア、シンガポール、
スイス、タイ、北朝鮮、ナウル、フィジー、ベルギー、
ルクセンブルク、アルゼンチン、エクアドル、エジプト、
ギリシャ、ガボン、トルコ、パナマ、パラグアイ、
ブラジル、ペルー、ボリビア、モンゴル、
リヒテンシュタイン
罰則がない国イタリア、グアテマラ、コスタリカ、ドミニカ、メキシコ
フィリピン、ホンジュラス
義務投票制の国

おまけ(国会議員数ランキング)

国別国会議員数ランキング(30位まで)
(二院制の国は両院合計の数)

順位 国名 2022年
1 中国 2,975
2 イギリス 1,425
3 イタリア 949
4 フランス 925
5 エジプト 892
6 ドイツ 807
7 インド 779
8 タイ 737
9日本707
10 北朝鮮 687
11 ミャンマー 641
12 南スーダン 634
13 メキシコ 628
14 ロシア 619
15 エチオピア 614
15 スペイン 614
17 コンゴ民主共和国 609
18 ブラジル 594
19 キューバ 586
20 トルコ 582
21 インドネシア 575
22 ポーランド 560
23 ウガンダ 556
24 スーダン 552
25 アルジェリア 548
26 米国 533
27 モロッコ 515
28 ベトナム 499
29 ナイジェリア 469
30 ルーマニア 466

資料:「国会議員数」 GLOBAL NOTE 出典: IPU(Inter-Parliamentary Union) より筆者が作成
※数値は1月1日時点での国会議員数

参考資料

列国議会同盟(IPU)HP(2023年2月10日参照)
外務省HP(2023年2月9日~10日参照)
諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢.国立国会図書館,2015
”世界の選挙のぞき見隊”.チャリツモ(2023年2月10日参照)

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